【百読一読】「努力する」の秘訣は「自分を知る」 – 映画「太秦ライムライト」に学ぶ「自分を知る」ことの大切さ
May 17, 2016

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© ELEVEN ARTS / TOTTEMO BENRI THEATRE COMPANY
日本では3年前に上映された「太秦ライムライト」(落合賢監督)。 1年おいて2014年にアメリカでも上映された。
私もそのときちょうど仕事の関係でリンクしたが、以来お気に入りの1作となっている。


「太秦ライムライト」は、日本の時代劇の枢軸ともいえる京都の東映太秦(うずまさ)映画村を舞台として、時代劇の変遷、またそれを支えてきた人々や現代の在り様を、分かりやすくギュッとまとめあげたドキュメンタリー風の作品となっている。

主演は、「5万回斬られた男」の異名を持つ往年の”斬られ役”ベテラン 福本清三氏。
トム・クルーズ主演映画「ラストサムライ (The Last Samurai, 2003)」で、トムの付き人(監視役)通称ボブで、知る人も多いでしょう。
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© ELEVEN ARTS / TOTTEMO BENRI THEATRE COMPANY
いまや70歳を超え芸歴50年、「銭形平次」, 「必殺」シリーズ, 「水戸黄門」など日本では知らない人はいないだろう人気時代劇の数々に出演している。
ただ、その役は「斬られ役」。長年培われた福本氏の持ち味は、主役を引き立て、いい画(え)を作り、なおかつ出来るだけインパクトを残すところ。普段も不自然ではない動きなど研究や練習を怠らず、物に頼らずその身ひとつでリアルに演じるという。

2014年11月のロサンゼルスでのプレミアで、私もご本人にお会いし、少しお話させて頂いたが、役の凄みはどこへやら、実際の彼はとても謙虚で、質問には余さず答える上にウィットを忘れない。プロの風格は絶大な御仁だった。

同じく主演ヒロインに山本千尋氏。
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© ELEVEN ARTS / TOTTEMO BENRI THEATRE COMPANY
彼女はもとより世界トップレベルの太極拳選手で、これまで数々の世界選手権で金・銀メダルを獲得している。19歳とは思えないとても大人びて落ち着いた雰囲気で、本作でも落ち着いてみていられるオーラを持っている。今後女優活動が増えていくのだろうが、将来性ある新生である。

福本氏はいつも斬られ役として多くの主役を引き立ててきたが、本作では松方弘樹氏、萬田久子氏、本田博太郎氏ほか、多くの大御所の顔ぶれが、福本氏を引き立てるようにうまくプロットされているのも面白い。
ストーリーは、太秦時代劇の存続を縦糸に、斬られ役の匠・香美山清一(福本氏)に尊敬を抱く伊賀さつき(山本氏)の師弟の信頼関係を横糸に進む。これをチャーリー・チャップリンの傑作「ライムライト」になぞらえているところが、また国際的な視野持っているとわかる。

温故知新
古きを重んじ、新しきを知る。「太秦ライムライト」を、そんな視点から綴ってみようと思う。
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© Mino-Miyabi

「古きを重んじる」。その真意は、単なる”歴史”だけのことではない。
自分自身を知るということ。
世の中は、時間とともに、年月を経るたびに発展してゆき、何もかもが早く通り過ぎてゆく。
人の思考はそれについてゆこうとするたび、自分を見つめる時間が持てなくなっている。
それがゆえに、人の一生で自分を見つめ成長するたびに培うはずの精神力、いわば「魂の宿り」が、どんどん遅くなっていく。

最近「ゆとり世代」がなんだ、困ったものだなどと盛んに騒いでいるのは、こういう流れのために思考が鈍ってしまうせいではないか。
「最近の若いもんは・・・」ではなく、実際は世代関係なく「人間が幼くなる」現象が進行しているのではないかと思う。

さつきが香美山に、立ち回りの稽古をつけてもらうよう申し入れる。一緒に木刀を振るさつきに、香美山はこう言う。
「自分を信じて、人を信じて。 一生懸命やっていれば、どこかで誰かが見ていてくれる。」

今の若者たちの多くには「努力すること」が足りないと言われる。
学校に行ったり、アルバイトをやったりすることは、努力ではなく生活の一部(継続)に過ぎない。
努力とは、目標を見つけ、その目標に向かって日々積み重ねること。
目標があるのに、毎日のサイクルを言い訳に積み重ねないのでは、努力はゼロ。
本当にその目標を達成したいのならば、努力する者は必ず日々進歩しようとするはずである。

ところが、あれこれと情報や手段がお膳立てされてしまっている現代社会で、「目標なんて必要がない」「忙しいから」「努力しても無理」という風潮を作りがち。かくいう自分も大学に上がった頃、まだ「努力」の意味をはっきり分かっておらず、一朝一夕に結果を出せることばかり選んでやっていた。 が、アーティストとして将来やりたいことが浮き彫りになってから、「ちょっとやそっとじゃつかない力を作るには、積み重ねる必要がある」と思い知ったとき、はじめて「努力」の文字が目の前に浮かんだ。

先人に学ぶというのは、自分を知ることと書いたが、努力とは、常に自分を知る営みにあるのかもしれない。
本作中でも、さつきが重要な一番で大きなプレッシャーに苦しみ、やがて克服するシーンがあるが、まさにこれこそ自分を見出す瞬間と言える。父親からよく「目の色が変わるはずだ」と言われたが、自分の立ち位置を見つけ、目標へのレールができた瞬間、人間やはり目の色が変わるのだろう。

よく映画や小説で、「これ、前はつまらなかったのに今見ると面白いな」という現象を体験した人も少なくないと思う。
私も最近ではありとあらゆる映画やドラマに興味が広がっているが、こういう「器」は、自分を見出し、経験し、さらにまた自分を見出す努力の中で、少しずつ大きくなっていくのではないかと思う。

とはいえ、つい自分をわかったつもりになって、間違った方向へ解決してしまいがち。
そんなときは、何か経験をしたときに、
「なぜ、うまくいったのだろう?」
「なぜ、今回だめだったのか?」
「なぜこの人は私と話がかみ合わないのか?」

というように、経験のカルテを見て「疑問を持つ」ことで、わかったつもりを洗い流し、よかったことも悪かったことも「認める」フェーズが訪れる。自分を見つめる時間がもてない現代というのは、とかくこの経験を振り返り自問する余裕がないという意味である。
この経験分析では、「自分を知る」は「自分のことを見てみぬふりをしない」という意味合いが強い。

抽象的な話が過ぎたが、「太秦ライムライト」を見直していて、以上のようなことを考えまとめていた。
自分にもまだいろいろ至らぬときや、ストレスを負うときがある。福本氏のように長年にわたって謙虚さを忘れず、自分を知り、努力して心を大きくしてゆきたい。

# 「太秦ライムライト」ネタバレを避けて、あまり見どころを語れませんが、お勧めです。
# 福本氏の寡黙な背中・・萬田久子氏の「言霊」演技力・・・本田博太郎氏の独特のオーラ・・・千尋ちゃんの眼力。
# そしてクライマックス。語るに尽きないので、ぜひ観ていただきたい!

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